政宗九の視点Blog

ミステリなどの本について、またAKB48(というか主にHKT48)について書いていく予定です

たぶん今年最後の読了本:G・K・チェスタトン『ブラウン神父の無心』新訳版(ちくま文庫)

ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

黄金時代ミステリのオールタイムベストのひとつ、チェスタトンの「ブラウン神父」シリーズ。逆説に満ちたトリックは後世のミステリ界に多大な影響を残しています。今は創元推理文庫で全5冊読むことができますが、このたび、ちくま文庫から一作目の新訳版『ブラウン神父の無心』(旧題『ブラウン神父の童心』)が出ました。南條竹則・坂本あおい両氏による共訳です。

旧訳版ももちろん素晴らしいのですが、なにせ読み難い。多分チェスタトンの元々の文章がかなり硬いのだと思いますが、さらに宗教的なネタも随所に割り込まれるので、読むのに苦労した記憶があります。それでも、素晴らしいトリックを味わうために必死になって読んでいたものです。

それが今回新訳になりました。原文の硬さを消し去るわけにいかないので、まだ読み難さは残ってますが、随分と改善されて面白くなってます。そしてやはり素晴らしいトリックの数々。一度読めば忘れない逆接ばかりなので、さすがに覚えてるものばかりでしたが、やっぱり面白い。一作たりとも凡作のない、まさにオールタイムベストに相応しい短編集でした。読んだことのない若い世代にも、これを機にぜひ読んでいただきたいものです。早く続巻が出るといいなあ。